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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
だまったまま、蜂谷良作は両方の眉をしかめるような眼つきで伸子を見た。
「利根さんてかた、何をしても、何かそこで味わうものを発見して、そういう風に味わえる自分の能力を味わうっていうタイプじゃないのかしら」
利根亮輔は大英博物館の図書館に近いところにある下宿のようなホテルに住んでいた。そして、毎日、数時間、図書館で勉強していた。マルクスは、イギリス経済学の正統学派から彼の価値論を発展させて来ている。リカアドからマルクスが自分の説を展開させて行ったつぎ目のところに、まだひとが研究していない点がのこされていると、利根亮輔はいうのだった。マルクスと云えば、歯がたたないものときめてしまって、ろくに勉強しようとさえしないけれども、その後光にたえるつよい知性があってよく見れば、マルクスの価値説にはある種の独断もあり、すきもある。リカアドから強引にねじって、もって来られているところがある。それを一つほじくりかえして見てやろうと思って。――
そういう利根の調子には、こんにちマルクス主義者とよばれている人々へのひそかな軽蔑が感じられた。利根は、彼独特の繊細な方法で、第三インターナショナルぎらいを表現している。