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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

けっして、一本になることのない双曲線だというわけだ。ところが、そういう対立があるからこそ、互に協調してやって行こうとし、やっても行ける。というのがイギリスの商魂なんだ。お互がちがうから独裁がいるとわめくのは、第三インターナショナルのやりかたさ。債権者や預金者に対しては破産しても、私生活では小さいながら富豪である木村の見解はそういうものだった。

「木村さんていう方の専門はなになのかしら」

「さあ、大学では経済をやっていたんだが――ちょっと新人会あたりに首をつっこんだこともあったらしい」

蜂谷は、考えていて、

「利根亮輔に会いませんでしたか」

と伸子にきいた。

「会いました」

「何していました?」

研究は何をしていたか、という意味だろうということはわかったが、伸子にはすぐ返事ができなかった。

「これは失敬したかな。佐々さんにきいたって無理だろうなあ」

「そうだわね」

ひどく素直に伸子が承認した。

「わたしにはわかっていないわ」

研究の題目がわからないばかりでなく、利根亮輔その人全体が男としても、学者としても、伸子にはわかるようで、わからないのだった。

「あの方は、ある意味で、学問についても人生についても好事家なんじゃないのかしら」