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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
「たった四五日のことだから、こんどは留守番しますか、姉さんにでもとまってもらって……」
つや子にしても、またジェネ※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)へ行って、中途半端な自信なさで大人ばかりの客間から客間へひきまわされることは、気づまりらしかった。つや子は、
「お留守番する」
と答えた。
「伸ちゃん、泊ってもらえるんだろうね?」
「ええ……できると思うわ」
「おや、何だか御不承知らしいね」
みんなにはだまっているが、けさのホテルでのことがあるから、伸子は、四五日こっちへとまるとしたら、と、ホテルの荷物がどうにかなってしまわないかしら、と思ったのだった。
「よくてよ、安心して行ってらっしゃい」
何かおこれば、おこったときのことだと伸子は心をきめた。
「じゃあお父様、そうきまったんなら、切符をお願いいたしますよ」
泰造は間もなく外出し、多計代は、ゆうべよく眠らなかったといって寝室へもどった。親たちの留守、姉とだけ暮すということが気にいったらしく、つや子は機嫌よく、客間の隅にかたよせてある絵の道具をもち出した。カンヴァスの上にはつや子の性格のあらわれた強いタッチで、前景に露台のある並木越しの風景が描きかけてある。