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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
太洋丸を解約しシベリア鉄道で日本へ帰ることが決定した。十月二十七日モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)発のシベリア鉄道で帰れば、ジェネ※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)から津田博士ともう一人、彼の門下生である若年の医博とも同道できる、そのことで多計代の決心がきまったのだった。
伸子は、モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)にいる素子にそのことを知らせるために、電報をうった。ペレールの家は十月二十四日、うちのものが出立すると同時に、持主にかえすことが通知された。どこかに住む場所をきめることが伸子にとって緊急の必要になって来た。
帰らない晩が数日つづいたことは、伸子とホテルとのいきさつを一層わるくした。その日伸子は、蜂谷良作のもっているアドレスの最後の一つとしてソルボンヌ大学附近の、昔からラテン区と云われている一廓に、部屋をみに行くことになっていた。旧い歩道のようにすりへった石の階段を蜂谷良作とつれだって五階までのぼりつめてその一室のドアをあけて内部を見たとき、伸子は身ぶるいした。街のほこりでよごれていつ拭かれたともわからないたった一つの窓から、うすぐもりのパリの日ざしがやっとさしている室内の壁は、ソルボンヌ大学の歴史とともに古びよごれていて、ラテン区でむしばまれたあまたの青春をかたるように、