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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

「ああいう場所へ、すぐぴったりできるんだから。――僕なんかには、つくづくいくじがないインテリ根性があると思った。――てれちゃうんだ」

会場で伸子が感じたことが、蜂谷の側から語られているのだった。

「ここまで来ればもうついそこなんだから、ちょっと休んで行きましょう、いいでしょう?」

冬の並木の裸の枝々を照している灯かげからすこしはなれて、石のベンチがあるところだった。伸子は、またまた、彼にほだされながら意気銷沈する自分を見とおし、それに抵抗するように、

「十一月の夜って、石のベンチにいい季節?」

はじめから、いそいで歩いているのでもない二人の歩調をゆるめなかった。

「僕は、実のところ、伸子さんに会ったのがおそろしいんだ」

「…………」

「僕に、新しい人生が見えはじめている。それを追求しずにはいられなくなってしまった。――だのに、佐々さんは、パリからいなくなろうとしているんだ……ね、伸子さん、僕は、どうしたらいいんだ」

ファシズム反対の労働者集会からのかえり路に、自分と蜂谷という男女の間には、こうした会話がかわされる。それは、伸子をばつのわるい思いに赤面させ、また悲しくさせる蜂谷の甘えだった。