轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
の絵は、亀田たちの格別の注意をひかなかった。――というよりも、ひろいパリという都の中でたたかわれている生の間では、磯崎という一日本人画家の運命について、それが巨匠的に成功していない限り、嫉妬も同情も刺戟するものではないらしかった。
中指の尖にはめた西洋指ぬきに針を当て、かたい婦人帽の生地を縫いつけながら、亀田の細君は、
「わたしにはね、ひとつ大願がありますのよ」と云った。
「お笑いなさらなけりゃ、云いましょうか。どうかして、わたしは亀田をイタリーへやりたいんです、そして、思いっきり才能をのばさせてやりたいわ」
あらまし形のつきはじめた帽子を左手にかぶせて、それを自分からすこしはなして亀田の細君は、注意ぶかくしらべた。
「伸子さん、あなたなら云って下さるわね、亀田の絵、どれも暗いでしょう」
「暗いって云えるかしら――地味なのじゃなくて?」
「――どっちみち沈んでいるでしょう?」
伸子は、そういうところに亀田のじたばたしない人柄を感じているのだった。
「亀田のようなたちの絵はね、どこへ出しても損なのよ」
経験による確信と心配とのある内助者の調子で、彼女は云うのだった。