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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
「わたしたち貧乏でしょう、だから亀田の絵もああいう風にくすんだ色ばかりつかうんじゃないかと思うわ――マチスの生活なんて、すばらしいもんですってねえ。佐賀多さんなんかも、いまめきめきうり出していらっしゃる最中だから、相当派手にやっていらっしゃるんですって」
カリエールは? モジリアニは? あの人々のところにあるのは何だろう? デュト街のよごれた壁の色をみたとき、伸子は、ああここにカリエールの色があると感じた。寂しいセピアと白いチョークのような光の消えた白さ。そこにパリの貧しい人々の人生の思いが語られている。「モンパルノ」というモジリアニを主人公とした小説がよまれているころであった。モジリアニの素晴らしい才能を独占するために――あとで価の出ることを見とおした画商が、彼の生活の破綻につけこんで、紙屑同然のはした金を与えては、モジリアニから制作をまきあげていた。モジリアニの生涯のいつ、うり出したときがあったろう。
「お金のいくらでもつかえるかたは、いいわねえ」
いくらでもお金のとれるかた、とこの細君が云わないところに伸子は、クラマールに住んでいる人々らしさを感じた。