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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
や、その刺戟のほかに、素子の日々の生活の感情そのものの中に、伸子を素子にはだまって山上元のところへ行かせるものがあるのだった。
「ぶこが行くのは自由さ。わたしにだまって行ったのも、自由だろうさ。だけれど、もし……」
素子の声が震えて途切れた。素子の眼に涙がいっぱいになった。
「もし、わたしも、行きたかったんだとしたら、ぶこ、どうしてくれる」
そういうことがあろうと感じられていなかったからこそ、伸子は素子にだまって、リュックスへ出かける気持になったのだった。伸子は、赧くなって、涙を目にためた。
「ごめんなさい」
心からあやまった。
「わたしには、そう思えなかったもんだから……」
やっと、一つの道を見つけて、伸子は素子に云った。
「あなたも行っていい心持なら丁度いいわ。きょう、いっしょに行きましょうよ。この前だって、何にも用という用はなかったんですもの、いっしょに行って見ましょう」
「そんなことが出来るかい!」
いつの間にか火の消えたタバコを咥えたまま素子は、明るい窓の外に顔をむけた。
「きみに、来い、と云ってよこしたんじゃないの。わたしも来い、とは云ってよこしちゃいないよ。