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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

パリの黒い山高帽に象徴されている小市民のすべてのみみっちさと常識と金銭についての野心を軽蔑して生きようとしている人々のモンパルナスだった。

右側に大きいキャフェ・ラ・ロトンドがある。そのすこし先にやっぱり大きいキャフェ・ドームが歩道いっぱい日除けをつき出している。どちらもモンパルナスに集る芸術家や芸術愛好者たちの中心なのだそうだ。しかし、どういうわけか、この一二年、ドームよりもラ・ロトンドの方がはやっていて、パリの有名な芸術家やパリへ来た世界の有名な芸術家たちの姿をよそながらにも見たければ、ラ・ロトンドへ行けと云われているということだった。いかにも定連らしい男たちがくつろいだ様子でパイプをふかしていて、青い玉飾を頸にまきつけたおかっぱの女が朱塗りの柄の長い婦人用パイプでタバコをくゆらしたりしている。小さい子供づれの家族的な伸子たち一行は、そのラ・ロトンドのテラスにかけて往来を見ながらコーヒーをのんだ。昼飯は、きょうもメトロのわきのブルガリア人の小料理店RIJOですました。黒いさっぱりした鼻髭をもっているRIJOの主人は、あんまり金のなさそうな、そして、大したひきもなさそうなパリの外国人は、とくに彼らが女づれの場合、羽根ののびきらない雛のようなもので、一度そこに満足すればあんまり遠くとびまわらないということ