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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
伸子たちとして、行った先でそういう質問をうけたのははじめてだった。
「わたしたちは党外のものです」
伸子が返事した。
「政治活動家でもありません。わたしたちは文学の仕事をしているから――けれども、わたしたちはあなたがたの仕事について知りたいと思って居ります」
白黒のなりの女は、役所風に、
「モージュノ(出来ます)」
と云った。そうひとこと云ったきりで、片手にもった鉛筆で、機械的に片手の手のひらをたたきながら不得要領にしている。その態度に刺戟されたように、素子が独特の悧巧で皮肉な鋭い片頬笑みを浮べながら、
「ソヴェト婦人部の仕事は、党員婦人だけのためにされるべきものなんですか」
と質問した。黒白の女は、急に目をさましたように伸子たち二人をみて、弁明的な早口で云った。
「そんなことはありません。ソヴェト代議員には、党外婦人の方がより多勢選挙されているぐらいですから」
しかし、この白黒の女に、東洋という観念がはっきりつかめていず、日本の女を見たのも初めてなのは明らかだった。ヴ・オ・ク・スの若いひとも、日本の女に会ったのは伸子たちがやっぱり初めてらしくて、どこか調子のわからないようなばつのわるさを、優美なそのひとらしく内気さと社交性であらわした。