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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
サラファンのひとは、クリーム色のプラトークの結びめのはじを、日焦け色をしたむきだしの頸のうしろでひらひらさせながら、
「大変うれしいです」
と、伸子たちにうなずいた、すると、白黒の女は、すこし声をおとし、しかしそれは十分伸子たちにきこえる程度で念を押すように、
「彼女たちは、党員でありません」
とつけ加えた。その瞬間、伸子は火のような軽蔑と反撥が胸の中を走ったのを感じた。党員でなければどうだ、というのだろう。どんな人だって、党員より前に人間であるしかないのだ。そして、女であるか男であるかしかないのだ。――
クリーム色のプラトークのひとは、到って平静で、伸子たちの上に視線をおいたまま、声の高さをかえず、
「それは重大なことじゃありません」
と云った。
「わたしたちは、みんなのために働いているんだから……」
白黒が立ってそこから去ったあとの椅子に、かわってサラファンのひとがかけた。
「さて、何からはじめましょう。あなたがたは遠くから来ていらっしゃるのだから、ここでの時間は有効につかわなくてはなりません」
サラファンのひとは、その室にいた別の女に云ってソヴェトの構成図の印刷したものを伸子たちに与えた。