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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

素子が妙に居すわってしまったような伸子に向って云った。

「ともかく電報うって見よう。――あんまりこれだけじゃ事情がわからないから」

「なんてうつ?」

しばらく思案して素子は、

「事情しらせ、とでも云ってやるか」

と言った。

「それがいいわ。じゃ、すぐ打って来る、正餐までに」

「いっしょに行ってやろう」

伸子と素子とは、人通りのたえている雨の大通りをデーツコエ・セローの郵便局まで出かけて、問い合わせの電報をうった。レイン・コートをもっていない伸子たちは、うすい夏服の前やうしろをすっかり黒く雨にぬらして帰って来た。

「ぶこのおっかさんなんか、わたしがこうやって却って気をもんでることなんか知りもしないんだから……」

毒のない不平の調子で素子が云った。

「ぶこちゃんが、これを放ってでもおいてみろ。無実の罪をきるのは、わたしさ」

東京から返事の電報が来るまでには少くとも二三日かかるということだった。伸子は、シキウキチヨウアリタシに気をわるくしながら、やっぱり返事が気にかかり、落付けず、快活さを失った。夜、素子の室で話したりしているとき、自然その方へ話が向いた。

「まあ、返事が来てからのことさ。