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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
伸子は津山進治郎にきいた。
「そんなようなことです」
「結核のサナトリアムは随分できていますが――どうなんでしょう」
伸子は不確に答えた。
「御承知のとおり一九二二年、三年まで、饑饉のチフスであれだけ死んだんですから、ソヴェトは決して無関心だとは思えません。でも、一般に予防注射なんかどの程度やっているかしら……」
モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)に一年半ちかくいた間に、伸子たちはそういう場合にめぐりあわなかった。
「性病予防の知識を普及させることは労働者クラブなんかでも随分行きとどいてやられて居ります」
「そりゃそうだろう」
半白の髭をつけた人は、満足そうにうなずいた。
「かなりな乱脈ぶりらしいからね。政府としても放っちゃおかれまい」
ソヴェトでは女が共有されているとか、乱婚が行われているとかいう種類のつくり話を否定しきろうとせずに、その半白の頭の中にうかべているらしいそのときの表情だった。
「いずれにしろ、現在予防医学の進歩しているところはアメリカだね。つぎが、戦前のドイツ」
「でもね」
その人がひとつひとつにひっかかってくる云いかたにだまっていにくい気持につき動かされた伸子は、