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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
「ホテルとしてはたしかにいいけれど。――でも、お母様にはどうかしら」
荷物がごたついたなかに、つや子の寝台まで夫婦の寝室においているアンテルナシオナールの室の光景を伸子は思いくらべた。
「お母様には、こんなところ、きゅうくつじゃないかしら。ちんまりしすぎていて……」
多計代は、外国へ来ても、それが無作法でないかぎり、日本人の習慣で生活してわるい法はないと信じていて、そのとおり実行した。十三にもなった娘の寝台を、親たちの寝室のなかへおかせていることが、ホテルの召使いたちの目にどんな風に映るかなどということは問題にしなかった。伸子がそれとなく注意したとき、多計代は、
「伸ちゃんは、つや子がどんなに神経質だか知っているのかい?」
気色を害された顔で云った。
「お前ってひとは、何でもそうだ」
つや子を多計代からはなそうとするのを、防衛しようとでもするような眼づかいだった。
しっとりと物しずかなホテル・キャンベルの雰囲気と、多計代が身のまわりにもっている大がかりな空気とは、どこかそぐわないものであることを、泰造も直感したらしく、
「お前のおっかさんは、何しろひろい室でなくちゃ気に入らない人なんだから」