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まぶたのはは
長谷川伸傑作選 瞼の母
長谷川 伸
Read 長谷川伸傑作選 瞼の母 (まぶたのはは) by 長谷川 伸 (はせがわしん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 94,753 characters · 192 screens
この小父さん、いい人かい。悪い人かい。
おきぬ (返事に窮している)
時次郎 小父さんは悪い人さ。だがね、もう悪かねえよ。
太郎吉 だって小父さんは、ちゃんを切ったあろ。
時次郎 勘忍してくれ。
太郎吉 だけど。おっかちゃんやおいらを助けてくれた。
時次郎 坊や、そう思ってくれるかい。有難う。
三蔵 信州の人。
時次郎 おう。いうことがあるんなら遠慮なくいっておくんなさい。引受けやすでござんす。
三蔵 た、た、頼む。(おきぬ太郎吉を指さし、柄杓を取落して倒れ伏す。母子は抱きついて泣く)
時次郎 (悚然として佇む)おや、人声がするぞ。(外をのぞく)ちょッ、来やがった。おかみさん。三蔵さんの髪の毛を切った、持って行くのだ。逃げ出すんだ。(喊声がかすかにする)奴等大勢、束になってやってきやがった。
おきぬ あ、喊の声をあげている。
時次郎 早くしておくんなさい。(外をのぞき)大分近くなりやがった。髪の毛を切ったら内懐中へしっかり仕舞うのだ。死ぬ時はその髪の毛を抱いてお死によ。
おきぬ はい。太郎吉おいで。
時次郎 裏から逃げられますかい。
太郎吉 うン。おいらが道を知ってらあ。