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まぶたのはは
長谷川伸傑作選 瞼の母
長谷川 伸
Read 長谷川伸傑作選 瞼の母 (まぶたのはは) by 長谷川 伸 (はせがわしん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 94,753 characters · 192 screens
第二場 利根の渡し
(駈けだしかける)
お蔦 ヘン何だい、あたしが怖くって、手出しがならないんだろう、ホホホ。
弥八 そうぬかせば、畜生、みんな、阿魔から先へ叩ッ挫け。
北公 だってお前、あの女には家のがお前。(鼻の下へ指を二本やり)じゃねえか。
良公 怒られちゃ詰らねえから止せ。
弥八 渡し場へゆけ。それ行け、それ。
お蔦 (鼻唄に小原節をうたいながら、手をのばして酒徳利と盃洗をとり、盃洗に冷え燗の酒をつぐ。窓に腰かけ酒を呷る)
第二場 利根の渡し
利根川渡し場。秋草がところどころに咲いている。川には葦がところどころ茂っている。渡し船が岸を出て、もう艪に代っていて、船首の方は葦に隠れ見えなくなっている。
船夫が艪を押している。客が数人乗っている。どこかで「おうい――おうい」と呼ぶ声がする。
船夫 (陸の一方を向いて、手を振る)駄目だ駄目だあ。ちょッくら待っててくれ、行って帰ってくるからよう。
渡し船が去ってしまう。
駒形茂兵衛、途中で食い物にありつき、前よりは健かになっている。
茂兵衛 おうい――おうい船頭さん――おうい。(駈けてくる)はあッ、行ってしまった。(陸揚げをした庭石らしいのに腰かけ、川を見ながら、懐中から食べ物を出す)川を渡って安孫子まで一里ぐらいだと、飯屋の人がそういった、安孫子から小金まで三里、そうは歩けない。