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まぶたのはは
長谷川伸傑作選 瞼の母
長谷川 伸
Read 長谷川伸傑作選 瞼の母 (まぶたのはは) by 長谷川 伸 (はせがわしん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 94,753 characters · 192 screens
第三場 冬の夜の街
亭主には死別れ、お恥しいこんな姿で、やッとその日をカツカツ送っております。
忠太郎 (もしや探しあぐねている母かと思い)余所へやったその子は、何という名前だね。
老婆 (我が子のたよりかと喜び)あ、あなたは幸太郎のことをご存じのお方か。
忠太郎 幸太郎といいなさるのか。それじゃ矢ッ張り違っていた。
老婆 (涙声で)左様でございましたか。
忠太郎 (もしやと思い試みに)お婆さんは若い時に、江州の方へ行ってやしなかったか。
老婆 (失望を深く覚って)いいえ。わたくしは江戸ばかり、川崎から先は一向に。
忠太郎 そうか――お婆さん、気を落さずにいるがいいぜ。今に屹と、息子が名乗ってくるだろう。また見かけたらあげるが、今夜はこれだけ(金をやる)あげますよ。
老婆 有難う存じます。おや、これは一朱でございます、こんなに頂いていいのでしょうか。
忠太郎 いいんだとも取っておきねえ。(歩いて少し、思わず立ちどまる)
老婆 (頭を幾度か下げ、三味線を弾く)
忠太郎 (的もなく、母探しにまた歩き出す)
第三場 冬の夜の街
江戸の、とある街。
真黒い冬の夜。辻番所が半分だけ見える。
中くらいの商人の母が、杖をつき提灯をさげて通る。