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まぶたのはは

長谷川伸傑作選 瞼の母

長谷川 伸

Read 長谷川伸傑作選 瞼の母 (まぶたのはは) by 長谷川 伸 (はせがわしん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 94,753 characters · 192 screens

Aozora Bunko

第三場 元の三蔵の家

時次郎 (ふてぶてしく、森の前に腰を据え、三人のすることをせせら笑って見ている)

磯目  今晩は、――今晩は。

苫屋  畜生め。開けねえな。勝手にしやがれ。(磯目と共に激しく叩く)

第三場 元の三蔵の家

道具と包とで太郎吉を囲み、その前におきぬが旅支度をして、匕首を持ち護っている。三蔵は鉢巻、襷がけ、草鞋ばきで抜刀し、入口から闖入する者に備えている。雨戸を叩く音が激烈になる。

三蔵  おきぬ。ちっとでも隙があったら裏から逃げてくれ。いいか。太郎吉を大事にしてくれ、頼むぞ。お前ただの体じゃねえ、大切にしなよ。

おきぬ ああいいよ。合点だよ。だけど、大丈夫かねえ。

三蔵  人斬り庖丁を互に持っているのだ。生きる死ぬるは時の運だ。

磯目  (雨戸を叩き破り)三蔵、首をとりに来た。(土間へ踏み込む)

三蔵  洒落臭え。(斬りつける)

磯目  とッとッと。(危うく躱して雨戸の外へ退く)

苫屋  よいしょッこら。(残りの雨戸を蹴外す)

大野木 三蔵、俺は大野木の百助だ。

苫屋  苫屋の半太郎だ。

磯目  おいらは磯目の鎌吉だ。

大野木 名乗りをあげておいてから斬るぞ。

三蔵  中ノ川一家の六ツ田の三蔵が、どのくらい働くか見やがれ。