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まぶたのはは
長谷川伸傑作選 瞼の母
長谷川 伸
Read 長谷川伸傑作選 瞼の母 (まぶたのはは) by 長谷川 伸 (はせがわしん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 94,753 characters · 192 screens
第四場 宿外れの路傍
子分 (桜の上で)親分、宿外れは手にとるようです。
八丁徳 時さんの姿は見えねえか。
子分 見えます。あれがそうでござんしょう。
八丁徳 見えるか。(安兵衛に)桜を荒して済まねえが許してください。遠くなった時さんのうしろ姿に、せめて頭の一ツもさげたいのでね。ご免なさいよ。(桜の木にかかる)
第四場 宿外れの路傍
骨箱を樹の伐株の上に置き丸腰の時次郎、宿を眺め追憶に耽る。太郎吉は石を拾いて積み合掌す。
太郎吉 ウン字を唱うる功力には、罪障深き我々が、造りし地獄も破られて、忽ち浄土となりぬべし……(和讃を唱える)
時次郎 お前、そんなこと、だれに教わったんだ。え、え。
太郎吉 宿のおじいさんとお婆さんにだよ。こうすると死んだおっかちゃんが、おいらの声を聞いて安心するんだとさ。ああ、おいら、おっかちゃんに逢いてえや。
時次郎 もっともだ。俺も逢いてえ、逢って一ト言、日頃思ってたことが打明けてえが――未来永劫、もうおきぬさんにや逢えねえのだ。
太郎吉 (忍び寄る人の姿に)小父さん、あッ、危ぶねえッ。
大野木 野郎ッ。(斬り付けて引ッ外される)三度目の正直だぞ。
苫屋 今度こそ間違なく首にするんだ。