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まぶたのはは
長谷川伸傑作選 瞼の母
長谷川 伸
Read 長谷川伸傑作選 瞼の母 (まぶたのはは) by 長谷川 伸 (はせがわしん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 94,753 characters · 192 screens
第三場 元の材木堀
べら棒め、汗水たらして働いて取る金だ、お情で戴くのじゃねえ。旦那がフン、聞いて呆れらあ。待ってやがれっ。(おさんが止めるのを突き退け、突き倒し、庭の竹垣を叩き破って飛び出す)
おさん (泣き倒れ、やがて帯の間から覚悟の剃刀を出し、壁にかけた政吉の着換えを取って抱きしめ、自害する)
金造 (鉈を持って空家へ飛び込み、隔ての壁を破って政吉の家へ飛び込み)政ちゃん政ちゃん――おさんさん、おさんさん。政ちゃん。
空家の入口に一、二人、近所の者が駈け付けて顔を出し、のぞき込む。
日はとッぷり暮れている。
第三場 元の材木堀
月が照っているその夜の材木堀。木挽が挽いていた角材が二つになって、その一方は地上に、一方は枠にのせられ、明日の仕事となっている。
砂村の方でする囃子の練習が、切れ切れに聞える。
二、三人の通行の男が、恐怖して逃げて通る。
政吉 (よきを携げ、金の入った財布の紐を腕にかけ、引き摺るようにして蹣跚として来たる、殺人をやった後である)
金造 (後より跟いて来たる)政ちゃん。(口がきけなくなる)
政吉 (モガモガと口を開き、辛うじて)金公か。
金造 お、お前、やったな。