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まぶたのはは
長谷川伸傑作選 瞼の母
長谷川 伸
Read 長谷川伸傑作選 瞼の母 (まぶたのはは) by 長谷川 伸 (はせがわしん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 94,753 characters · 192 screens
『瞼の母』大詰 荒川堤 異本(一)
(歩く)逢いたくなったら俺あ、眼をつぶろうよ。(永久に母子に会うまじと歩く)
金五郎 (忠太郎を殺し、下手人を鳥羽田に塗りつけ、おのれは水熊へ強もてで、入婿になる計画を捨てず、鳥羽田の刀を拾って、忠太郎の隙を伺い、忍び寄り刀を擬し、今や刺さんとする)
忠太郎 (心づく)野郎。(金五郎の退路を塞ぎ、じッと見る)
金五郎 (棄鉢になり、闘志が旺んになる)
忠太郎 お前の面あ思い出したぜ。(斬る気になり、考え直す)お前、親は。
金五郎 (少し呆れて)何だと、親だと、そんなものがあるもんかい。
忠太郎 子は。
金五郎 無え。
忠太郎 (素早く斬り仆し、血を拭い鞘に納め、斜めの径を歩き、母子の去れる方を振り返りかけてやめる)
朝の真赤な光が映す、忠太郎、その光に背いて、股旅の路に踏み出す。
船頭歌、遥かに聞える。
船頭歌 降ろが照ろうが、風吹くままよ、東行こうと、西行こと。
幕
昭和五年二月作
『瞼の母』大詰 荒川堤
異本(一)
金五郎の「何? 親だ? そんなものがあるもんかい」を承けて――。
忠太郎 この野郎、そんなものと吐かしやがる、やい、子はあるか。
金五郎 子だと、そんな者。
忠太郎 ねえな。