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まぶたのはは
長谷川伸傑作選 瞼の母
長谷川 伸
Read 長谷川伸傑作選 瞼の母 (まぶたのはは) by 長谷川 伸 (はせがわしん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 94,753 characters · 192 screens
通してやるから野郎をここへ連れてこい。
時次郎 (皆の背後よりぬっと出る。八丁徳に貰った長脇差、鉢巻、襷、草鞋がけ)沓掛の時次郎が親仁さんに連れられてさあ来たぞ。親仁さん通んなさい。
安兵衛 あいよ。
大野木 どっこい、通さねえ。
時次郎 約束が違うぞ、通せい。
苫屋 厭だい。やい時。忘れたか俺だ。六ツ田の三蔵の家以来だな。
時次郎 苫屋の半太郎に、大野木の百助か。
苫屋 勝負しろい。(刀を抜く)
時次郎 勝負がしたけりゃ一人で勝手にしていろ。こっちゃ急ぎだ。(一人の博徒を捉えて苫屋に叩きつける)
大野木 野郎。(斬ってかかる)
時次郎 (皆を相手に抜刀をせず争闘し、苫屋の外は悉く泥田へ投込み蹴込む)この野郎(苫屋を押えつけ)親仁さん。もう大丈夫だ、急いで行っておくんなさい。だが、さッきの一両、失くしやしねえでござんしょうね。
安兵衛 あるよ、確だ。貧乏人の俺が預かったのだ。ちゃんと腹へ巻きつけてる。じゃ行くよ。
時次郎 頼みます。(安兵衛の去るを見送る。苫屋、刎ね返して斬ってかかる)じたばたするない。本当なら叩っ斬るんだが、今の俺は斬らねえよ。その代りこれだッ。(泥田の中へ投込む、泥田から這いあがろうとする大野木その他、苫屋のために再び落込む)