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まぶたのはは
長谷川伸傑作選 瞼の母
長谷川 伸
Read 長谷川伸傑作選 瞼の母 (まぶたのはは) by 長谷川 伸 (はせがわしん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 94,753 characters · 192 screens
政吉 ああいいとも。それじゃ一服して行くかね。(徳之助を殺しかける、又も反省する)ここなら、たとえ文太郎の奴が追っかけて来ても、此方が先に目付けるから安心だ。逃げるにかまけて、左程にも思わなかったが、さすがここいらは名の響いた中山七里、いい景色だなあ。
徳之助 おなか、見てごらん、いい眺めじゃないか。
おなか え。――見る限り、紅葉で一杯、まあ美しい。
徳之助 (おなかと共に四方を見て歩く)
政吉 (徳之助を殺そうとして思いとどまり、煙草を吸いつつ、文太郎の追跡を恐れ、監視を怠らず。時におなかに凝視を向ける)
おなか (政吉の素振りに心づけど、それは云わず、別れてしまいたいと徳之助に囁く)
徳之助 (おなかに囁き、漸く決心して政吉に)政吉さん、この度はいろいろとお助けを蒙りまして有難う存じます。
おなか お礼の言葉もございません。
政吉 なあに、文太の奴はあっしにも、ちっと憎む筋のある野郎でさあ、お前さん方のためばかりか、あっしの腹癒にもなったのだから、そう礼をいうには及ばねえ。
徳之助 就きましては。
政吉 え。
徳之助 (おどおどと)段々とお世話になったご恩は決して忘れませんが、三人一緒では人目に立ちます、ここでわたし達は、別れて行かせて戴きたいと存じますが。