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まぶたのはは
長谷川伸傑作選 瞼の母
長谷川 伸
Read 長谷川伸傑作選 瞼の母 (まぶたのはは) by 長谷川 伸 (はせがわしん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 94,753 characters · 192 screens
忠太郎 手を出しな。(おとらに銭をやる)
おとら 兄さん、お前さん――。
忠太郎 (厭味な言葉を聞くまいと押えて)おッと、俺の尋ねに返事をしてくれ、少しばかりだが口のきき賃だ。
おとら ああ左様か。そんなら何でも聞くがいい、損が行かなきゃ大抵話すよ。
忠太郎 お前、大きな子がありゃしねえか。
おとら 子かい。(黯然として、俯向く)
忠太郎 (もしやと思わず焦慮り)あるのか――お前に。(暗い気になる)
おとら (シクシク泣く)
忠太郎 思い出させて泣かせてしまった。――婆さん、(もしこの人が母だったらと思う苦しみを抱き)その子はどうしているね。
おとら 生きていると三十一だ。死んでしまった。
忠太郎 (ほっと息をつき)そうか。飛んだ事を聞いて悪かったな。堪忍しとくれあやまるぜ。(行きかける)
おとら 兄さんちょっと待っておくれ。お前さんは嬉しい人だ。夜鷹婆だ何だ彼だと、立番の野郎までが嗤うあたしに、よく今みたいな事を聞いておくれだった。何年振りかで人間扱いをして貰った気がするんだ。(頭を下げて)どうも兄さん、有難う、忘れないよ。
忠太郎 そんな話を聞くのは、俺には毒だ。(行きかける)