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まぶたのはは
長谷川伸傑作選 瞼の母
長谷川 伸
Read 長谷川伸傑作選 瞼の母 (まぶたのはは) by 長谷川 伸 (はせがわしん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 94,753 characters · 192 screens
弥八 (刺身庖丁を持ち、肌脱ぎとなり、往来へ飛び出す)
料理人その他が店の入口まで追って出る、それから先へはだれも進み出ぬ。お吉とお松とは店へ駈け込む。
お蔦 (柱にもたれ、髪を櫛で掻きながら下を見ている)
弥八 さあど奴もこ奴も命をフン奪ってやるから出てこい。さあ。(ギロギロ見廻し)畜生、みんな隠れやがったな。
駒形茂兵衛(二十三、四歳位)汚ない単衣物一枚、素足に草鞋を穿く、力士志願で親方をとり、漸く付け出しにはなったが、前途がないと親方に見限られ、旅興行先で追い払われて通りかかる。
茂兵衛 (何とも知らず来り、弥八に行き合う)
弥八 (庖丁を擬して睨む)
茂兵衛 な、なにをするんだ、わしが知るものか。
弥八 野郎ッ。(逃げ廻る茂兵衛を追い廻す)
茂兵衛 (空腹のために、よろめき勝ちで、再々危うくなる)わしは何も知らぬ、な、なにをするんだこの人は。(逃げ廻る)
料理人その他はハラハラするのみで、挺身して弥八を押える者がない。
お蔦 (じッと見ていて、疳癪を起し、盃洗をとって水を弥八に浴びせる)
弥八 ぷッ。(顔を片手でツルリと撫ぜる)
お蔦 水をかぶって少しは気が落ちついたかい弥あ公。