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まぶたのはは

長谷川伸傑作選 瞼の母

長谷川 伸

Read 長谷川伸傑作選 瞼の母 (まぶたのはは) by 長谷川 伸 (はせがわしん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 94,753 characters · 192 screens

Aozora Bunko

弥あ公とか弥あさんとか、以前いった男ではござんせんか。

老船頭 知ってるのかね弥八を、八さんをね。

茂兵衛 いえ存じちゃおりません、名前だけ聞いたような気がいたします。変なことを伺うようですが、弥八の評判はようござんすか。

老船頭 さあ。(云い渋っている)

茂兵衛 判りました。あ奴、評判は良かねえんだ。

老船頭 (慌てて)そんなこともねえよう。

茂兵衛 なあに、ようござんす。もう一つ伺いてえのだが――ねえお船頭さん。失礼申しあげて腹を立てさせるか知れませんが、安孫子屋にいた女を一人でも二人でも、ご存じゃござんすまいか。

老船頭 (迷惑そうに)な、なにを訊くんだ、年寄りに。

茂兵衛 こ奴あ悪かった。ご免ください。

老船頭 やや、そういわれると却って痛いだ。昔のことなら俺だって、一度や二度はあすこで遊んだこともあるに。

茂兵衛 お蔦さんという女を、もしや知っちゃいませんでしょうか。

老船頭 お蔦ね、はてなあ、聞いたようだが、どの女のことだったかなあ。(船の中に向って声をかける)おい清大工、ちょっとこいよ。

老いたる船大工清吉が、船尾の上に半身を出す。

清大工 何だあ。用かあ。