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まぶたのはは
長谷川伸傑作選 瞼の母
長谷川 伸
Read 長谷川伸傑作選 瞼の母 (まぶたのはは) by 長谷川 伸 (はせがわしん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 94,753 characters · 192 screens
お蔦 と申しますと。
根吉 堅気に化けたイカサマ師なんだ。(外へ出て戸を閉める)
お蔦 まあ。(喫驚する)
お君 お母さん、もう済んだの。何、今の人のいったこと。
お蔦 何、何んでもないさ、子供には判らないことなのさ。(散乱した色紙を笊に入れる)それよか、もう直き、お父さんが屹と帰ってくるよ。
お君 お父さんてどんな人。
お蔦 お君ちゃんは、どんなお父さんだか知らない筈だ、お前が生れた時はもういなかったんだもの。
お君 あたい少しお父さんを憶えてる。
お蔦 どうして。
お君 だって、あたいがもっと小さい時、お菓子をくれていった人、あれが屹とお父さんだわ。
お蔦 そんなことがあったかねえ。事によるとそうかも知れない。(土間の窓が外からそっと開く)あれ。(取り縋るお君を抱く)
窓から辰三郎が顔を出す。今まで近くに潜んでいたのである。
辰三郎 あたしだ。
お蔦 どなた、どなた。(起って行き、じッと見る)まあ。
辰三郎 奴等が帰って行ったのは知っているが、だれも残ってやしないだろうな。
お蔦 ええ、だれも。お君ちゃん、お父さんだよ。
お君 (土間へ駈け出し、入口を開ける)お父さん。