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まぶたのはは
長谷川伸傑作選 瞼の母
長谷川 伸
Read 長谷川伸傑作選 瞼の母 (まぶたのはは) by 長谷川 伸 (はせがわしん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 94,753 characters · 192 screens
それにつけても、さッきの奴等は人間だか棒杭だか訳がわからない、一層棒杭の方が口をきかないだけに、ずっと優しだ。
時次郎 なんかでまた腹を立ててますね。(おろくのあとに付き安兵衛の部屋へ入る)只今の一両の口を是非ともお世話なすってくださいまし。何しろ赤ン坊が生れる矢先でござんすから。へい。
安兵衛 (渋面をつくり、煙草をくゆらせていたが)それがな時さん、駄目なんだ。
時次郎 駄目。駄目じゃ困る。ね、どうして駄目なんでござんす。先方から断ってきたんでござんすか。
おろく (茶を入れながら)おや、変な風向きになったね。
安兵衛 断りになぞくるものか。向うじゃアテにしてる位のものだ。
時次郎 じゃいいでござんしょう。あっしは行きていのだ、一両の金が咽喉から手が出る程欲しいのだ。
安兵衛 だが、いけないよ。駄目だ。
時次郎 何んで、いけねえ、駄目でござんすえ。
安兵衛 やくざ渡世がふるふるお前は厭になった人だろう。だから駄目さ。
時次郎 ええ。
安兵衛 一両の口というのは、お前にもう一遍、やくざになれという話なのだったよ。
時次郎 元のばくち打ちになれ一両やろう、というのでござんすか。