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まぶたのはは
長谷川伸傑作選 瞼の母
長谷川 伸
Read 長谷川伸傑作選 瞼の母 (まぶたのはは) by 長谷川 伸 (はせがわしん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 94,753 characters · 192 screens
藤助 じゃあ何も知らねえてんだな。
三次郎 よせったらよ。さあ一服しょうよう一服しょう。
鳶口棹を角材にのせ、テコやコロを尻にして三人共雑談に耽る。
治平、鋸屑が眼に入り、いろいろすれど取れず困っている。
川並の政吉(二十七、八歳)堀の中の仕事を済ませ、鳶口棹を担ぎヒョイヒョイと調子をとって堀に浮かぶ角材を渡ってくる。
治平 これはいけねえ。(自分で息を眼へ吹きあげる)ふツ、ふツ。こりゃいけねえ。ふツ、ふツ、こりゃ駄目だね。
政吉 (陸へ飛びあがり)治平さん、何でえその恰好は、ああ眼え鋸ツ屑でもはいったか。
治平 政さんだね。何ね、眼の奴が鋸屑の中へ飛び込みやがって大苦しみさ。ふツ、ふツ。
政吉 何だ、眼の方で鋸ツ屑へ飛び込んだのか。頓狂だな、お前の眼は。
治平 え。はあ、云い違えたか、ハハハハ、笑わせやがる。
政吉 そりゃ俺の方でいうことだ。(鳶口棹を立てかけ)どれ取ってやるからこっち向きな。汚ねえ眼をしているなあ、朝、顔を洗わねえのか。
治平 政さんは男もよしキップもいいが、口だけはよくねえわい。
政吉 もうちょいと、上瞼を引っ繰り返しな。
治平 おいしょ、こうか。