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まぶたのはは
長谷川伸傑作選 瞼の母
長谷川 伸
Read 長谷川伸傑作選 瞼の母 (まぶたのはは) by 長谷川 伸 (はせがわしん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 94,753 characters · 192 screens
政吉 うむ。女は弱いので損だなあ。
おさん あたしゃこれで、もう、死んでもいい。
金造 (漸く隔ての壁の貼紙に心づき引剥す、下は木舞竹あらわな壁穴。木舞竹をり)俺だ俺だ。俺を入れてくれ。
政吉 (土間にある背板で、壁穴を覆う)相手は一体だれだ。まさか、俺の落度を見つけたがって、方々聞いて歩いてる亀久橋の文太郎じゃあるめえな。
おさん いいえ――ね、そりゃ聞かないでくれないか、聞いたら却って気もちが悪いからねえ。
政吉 何故いえねえんだ。手前が隠す処をみると、(再び奮激して)畜生っ。(よきを取る)
おさん ええ。どうなろうと構うものか。お前さん、金ずく腕ずくで、あたしを、あたしを、こんな破目に落した男の名をいうよ。
政吉 だれだ。どいつだ。
おさん お前が毎日働いてる先の餌差屋の旦那だよ。
金造 (壁が毀れぬので、近所へ得物を借りに飛び出す)
政吉 あいつが、餌差屋の旦、旦那が、本、本当だな、間違いねえな。
おさん お前が世話になってるから、それを思っていわなかったんだよ。
政吉 (殺意を生じて)ようし。
おさん あれ、お前さん、ど、どこへ行くの。
政吉 (おさんを突き退け)金せえ出しゃ、世の中のことは、どうともなる気でいやがらあ。