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まぶたのはは
長谷川伸傑作選 瞼の母
長谷川 伸
Read 長谷川伸傑作選 瞼の母 (まぶたのはは) by 長谷川 伸 (はせがわしん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 94,753 characters · 192 screens
忠太郎 お袋さん有難うござんす。そんなにいわれると、親なしッ子の忠太郎は、意気地もなく涙ッぽくなるのが癖でござんす。嗤わねえでおくんなさい。
おむら 失礼ですが忠太郎さん。あなた路用のお金は。
忠太郎 金なら未だ未だ懐中にござんす。いざとなれば肌につけた、金百両に手を付けます。
半次郎 え。哥児、そんな大金を持っていたのか。知らなかった。
忠太郎 初めて逢う母親がゆたかに暮していればいいが、さもねえ時はと賭博場で目と出た時に貯めた金よ。俺あ行くぜ。半次、堅気になった姿を、いつか一度屹と見に行くぜ。だが、こいつ等をこの儘じゃあ、後の難儀が思いやられる。
おむら いえ、何とでもなりますから、忠太郎さんは今の内に。
忠太郎 そうだ。この野郎、恰度いい物を持ってやがる。(七五郎の矢立を取り、懐中紙を披き)半次、お前は俺同様、無筆だったろう。お袋さん、字を知ってるなら俺の手を取り、いう通りの文句を書かしてはくれませんか。
おむら おお訳もないこと。何と書いたらいいのです。(忠太郎の筆持つ手を取る)
忠太郎 一ツ。この人間ども、叩ッ斬ったる者は江州阪田の郡番場の生れ忠太郎。