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まぶたのはは
長谷川伸傑作選 瞼の母
長谷川 伸
Read 長谷川伸傑作選 瞼の母 (まぶたのはは) by 長谷川 伸 (はせがわしん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 94,753 characters · 192 screens
少しの間顔を見せてやってください。迷いに曇ったあたしの心を、お恥しいがお前さんの顔がどのくらい慰めてくれるか知れません。昼日中の往来端でいけ図々しい野郎だとお思いだろうが。
おなか (怺え切れず)あれ、わたしは、あちらへ。
政吉 邪魔をして済みません、もう直ぐお別れいたします。本当に直きお別れ申します――と云って、立って動かねえあっしだ、よくよく厭な奴とお思いでしょうが、思われても仕方がねえのだ。もう参ります。そんなに睨まねえでください。今別れたら、あっしはこの飛騨の山と山との間に一生いる体。お前さんは何処の空の下へ行く人か――どうも済みませんでした。お別れ申します。(行きかける)
おなか あ、もし。
政吉 へ?
おなか そんなにわたしが、おさんさんとやらに似ているのでしょうか。
政吉 気の故か、声までが――それも迷いなんでしょう。
おなか この高山ではあたし達、稼ぎが細くていけません故、どこかの国へ行くつもりです。そうすれば二度とまた、お目にかかりはいたしますまいから、追い立てなどは致しません。もう、わたし、厭な顔もいたしますまい。
政吉 (眼をしばたたく)