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まぶたのはは
長谷川伸傑作選 瞼の母
長谷川 伸
Read 長谷川伸傑作選 瞼の母 (まぶたのはは) by 長谷川 伸 (はせがわしん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 94,753 characters · 192 screens
(安孫子屋の角柱の処に菊の鉢が一つ置いてある。外側の窓の脇に榎の老木があり竹垣を四方に結ってある。その中で秋草が少し咲いている)
(二階は三尺障子が閉まっている)
店の前に料理人、帳付け、酌婦お吉、お松、その他が立って、道路の向うでしている喧嘩の方を見ている。そっちの方から喧嘩する男の声が聞えているが、だれの眼にもまだ見えていない、二階では近在からきている放蕩者が、酌婦を相手に遊んでいると見え、三味線の爪弾きの音が聞える。
料理人 (爪先立ちをして喧嘩の方を見る)
お吉 (料理人に)見える。
料理人 うンにゃ見えねえ。
お松 (少し酔っている)こんな時はのッぽが得だと思ったらそうでもないんだね。
料理人 何をいやがる。おッ、人が出てきた。
お松 まさか鬼は出てきッこないさ。
帳付け お松どんお前また酔ってるな。酔うもいいがお前のは質がよくないからなあ。やあ、人がみんな押し出されたように横町から出てきたぞ。
子守子 (息せき走ってくる)
料理人 あれッ雪崩を打って人が――あ、駈ける、みんな駈けてこっちへ来る。
お吉 (子守子を捉まえそうにして)だれが喧嘩してるんだい。