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まぶたのはは
長谷川伸傑作選 瞼の母
長谷川 伸
Read 長谷川伸傑作選 瞼の母 (まぶたのはは) by 長谷川 伸 (はせがわしん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 94,753 characters · 192 screens
窓のある土間の上に、川魚の串刺しが吊るしてある。畳敷の方には仏壇代りの箱に男名前の位牌が置いてある。片隅に飴売りに出る着物、笠などと道具がある。ここの家は母子二人ぎりで、母が飴売りに出て生活ているのだと直ぐわかる)
お蔦(三十三、四歳)子の愛にひかされて、独り身で、細々と生計を立てている。
お蔦 (飴の景物につける小さな幟と吹流しを作っている)
お君(十歳か十一歳)折ってきた山桜の枝を位牌に供えている。
街の方で子供の声がする。
子供 (声)夕焼け、小焼け、あしたも天気になあれ。夕焼け、小焼け、あしたも天気になあれ。(遠くなる)
お蔦 お君ちゃん。お前いい子だ、燈火つけておくれな。(吹流しを作り続ける)
お君 ああ。
お蔦 気をつけてね、油をこぼさないように。
お君 ああ。(燧石を摺る、誤って指を打つ)あ痛ッ。
お蔦 (喫驚して起つ)どうしたの。指を打ったんじゃないかい。どれお見せ。まあ血が出て来た。痛いだろうね、我慢おし、ね。薬つけてあげるから、自分できつく抑えといで。(昔の名残りの葛籠の底から、成田山の疵薬を出す。薬は辛うじて残っている)少しシミるけれど、もうこれで大丈夫、今、結えといてあげるよ。