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まぶたのはは

長谷川伸傑作選 瞼の母

長谷川 伸

Read 長谷川伸傑作選 瞼の母 (まぶたのはは) by 長谷川 伸 (はせがわしん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 94,753 characters · 192 screens

Aozora Bunko

北公  俺も手を放してやらあ。(お君をお蔦の方へ突ッ放す)

お蔦  (お君を犇と抱き緊め、儀十等に敵意の眼を向ける)

儀十  根吉、手前の方がいい。阿魔に泥を吐かせろ。

根吉  へえ。(お蔦に)ツイ手荒くなって済まなかった、これには訳があるんだ。お前の亭主というのは辰三郎、あの位牌に書いてあるからそうなんだろう。その辰三郎は死んでやしねえ、生きているんだ。

お蔦  ――えッ、そ、そりゃ本当なんですか。

根吉  本当とも、現に俺までがこの眼で見たんだ。

お蔦  どうして辰三郎だと、友達でもないお前さんに判ったんです。

根吉  俺あもとより辰三郎なんて人知りやしねえが、元はこの土地にいた升さんという人が、見知っていて、あの男なら関宿の浜棟梁の処にいた船印彫師の辰三郎といって、十年余り前に行方知れずになった男といったので判ったんだ。

お蔦  まあ――あの、生きていてくれたのか。お君ちゃんお父さん生きてるんだって。

お君  どこへ行ってるんだろう。早くお家へくればいいのに。

河岸山 ははあ、こりゃなかなか旨く胡麻化すて。

儀十  そうだね。ヘン。(お蔦母子を侮蔑する)

根吉  辰三郎という男とお前さんとは、そこにいる子まで生した深え仲だと判ってみれば、利根川を挟んで三堀布施、安孫子で姿を見かけたからは、どこへ行くものか女房子供のところ