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まぶたのはは
長谷川伸傑作選 瞼の母
長谷川 伸
Read 長谷川伸傑作選 瞼の母 (まぶたのはは) by 長谷川 伸 (はせがわしん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 94,753 characters · 192 screens
辰三郎 手間どってしまった。逃げる工夫はいくらもある。さあ、ここを出てしまおう。
お蔦 あい。
再び入口の戸が開いて、引返してきた茂兵衛がはいってくる。
茂兵衛 (驚く夫婦を制して)出ちゃいけねえ。悪いことになってきました。
辰三郎 お蔦、とうとう逃げ遅れた。逢って直ぐだが、お別れだ、お君を頼む。
お君 (辰三郎に縋り)どこへ行くの。厭だ、一緒に行こう、お母さんもよう。
お蔦 お前さん、不具にされても、あたしは傍を離れやしないよ。
茂兵衛 大丈夫、そんなことを奴等にさせるもんじゃござんせん。やッ、家の近くまでやってきたな。お蔦さん、子供をキッチリ抱いて、ご亭主の傍にぴッたり付いて。(外の様子に耳を向け)ここの家から外へ出るな。
辰三郎 えッ。
お蔦 (じッと茂兵衛を見ている。見憶えがあるような気がしてきている)
茂兵衛 あらまし形がついたら、その時あ親子三人、志す方へ飛んで行くのだ。(外から戸を敲く。心張棒をとって振ってみる)
お蔦 あッ、思い出した。
茂兵衛 そうでござんすか。面目ねえ。(戸を開く、彦が顔を出すのを突き出し外へ出て戸を閉める)
お蔦 (辰三郎に、茂兵衛のことを語る)