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Japanische Klassiker mit Furigana

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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

Lesen Sie 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 173.309 Zeichen · 352 Bildschirme

Aozora Bunko

三

「――持っていたか。今日までも」

すべての感動を喪失して、木偶のような十数年を送って来た旗岡巡査の頬に眸に、眉に、筋肉に、火華のような烈しい感情のふるえが走った。

「……ええ、これだけは、お父っさんと死に別れた後も、慥乎と持っていました。孤児になって、茶屋奉公に売られたり、博奕打の女房になってみたり、神風楼の花魁にまで身を落しても、これだけは肌身に着けていたんです。きっとこういう所で会う約束事に極まっていたのかも知れませんね」

三

真実は皆死んで行った。

死に別れた過去の友と、もうこれもこの世の人ではないが、あの実兄粂之介と。それ以外、社会に真実などは求めてもあり得ない。

こう冷たく頑なに思い込んで来た旗岡巡査は、突然、十数年の埋み火を掻き立てられるように、瞼を赤くし、今にも声をあげて泣くかのように顔の筋をぶるぶると吊った。

それを、じっと、怺えるように、壁際の位置から離れずに直立している。

どうして――あの純な船頭の小娘が、こうも変って来たのか。怖ろしい殺人まで犯したのか。

とても簡単に、いいきれない気持もあろう、事情もあろう。聞きたい。聞いてやりたい。