Japanische Klassiker mit Furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lesen Sie 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.609 Zeichen · 362 Bildschirme
十一
「昼間から七と会っていたんだろう。人の住まない家だ。足痕を見ればわかる。こっちへこい」
気狂いじみた力で、抱きしめたまま、ぐいぐいと空屋敷のほうへひき摺って行った。お芳の額は汗ばんでいた。苦しかった。けれど彼女は悲鳴などはあげなかった。
……………………
それから後、ふたりは度々、草いきれのこもった古家の雨戸をはずして、こっそりと黴の咲いている闇の中を楽しんだ、昼間会う時もあった、夜会う時もあった。
十一
気色のわるい面を見たので、七は何もしないで、陣屋跡の古家から帰って来てしまったが、そこへとりに行った物は、まだしばらく足りているので二十日ほど行かずにいた。
その間に、彼は、自分の心魂をつめこんだに等しい八寸玉の製作を終った。
八寸玉というとかなり大きな物である。玉の外殻はうすい雁皮紙で一枚一枚貼って、金属のようになるまで根仕事で固めたものである。中は、秘中の秘だった。二つに割ってみれば、ちょうど人間の脳を解剖してみたと同じに、大脳や小脳や血漿や細胞や、微妙な物体の機構がくるんであるのだった。誰がこれを生き物でないといえるだろうか。七は、膝にのせてみて、つくづくとそう思った。