Japanische Klassiker mit Furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lesen Sie 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.609 Zeichen · 362 Bildschirme
自分の役目ばかりでなく、もし、兵部の秘策を明かして、先が、聞き入れない場合は、首にして、帰らなければならないからだった。
「お里を手に斬けたさえ、後では、いい気持ではないのに、その弟まで、万一にも」
と、考えると、祈らずに、いられなかった。――どうか、難なく、丈八郎が、吉良家へ身売りする事を、承知してくれればいいがと。
「そうだ、返辞を待っている間に」
顔を、笠でかくして、彼は、急に思い立ったらしく、宿屋を出て行った。
すぐ、分った。
城下の南郊、梅が、ふくらんでいる。生前に、お里から聞いていた木村家の菩提寺である。
「む、ここか」
と、探しだした、一つの墓。
あたりを見廻した。――梅花が明るい。
今日まで、肌に、抱いているにも、捨ててしまうにも、気にかかって、このまま、なお持っていると、病気にでも取ッつかれそうな気がしていた簪を――あの里次の生首のにおいを持つ簪を――、そっと、墓石のそばの土中へ、ふかく、差し込んだのである。
悪夢を、封じたように、
「ああ、これで、さっぱりだ」
と、一角は、掌の土をたたいた。
春の雲が白い。――紅梅が紅い。
からん、からん、と笑いたいように、心が軽くなった。