Japanische Klassiker mit Furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lesen Sie 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.609 Zeichen · 362 Bildschirme
びっくりして、唇のいろが変った。二百両である。――誰が? と胸がわくわくした。
「ああ、きっと、先刻の人が……」
と、思わず心のうちで拝んだ。何となく、さっきの言葉にも、情があった。父を起して話そうかと、昂奮した気もちにもなったが、病人の寝顔を見て、黙って、棚のうえに乗せて、眠りについた。
彼女はいつまでも寝られなかった。路地の暗がりで見た男のすがたと、二包の金が、眼について寝られなかった。そのうちに、頭が思案につかれて、眠りに落ちた。
――もう明け方。
何か、冷たい手にでも撫でられたような気がして、ふと、眼をあけると、うつつな、渋い網膜に、大きな人影が映った。絞りの手拭で、頬冠りをして、壁の下を、這ってゆくのであった。
「おやっ?」
夢中で、彼女が、ふとんを刎ね退けたとたんに、男は、ぬっと立って、裏口へ飛び出そうとした。だが、その弾みに、病人の枕に蹴躓ずいたので、気丈な、彼女の父は、自分の病体をも忘れて、
「誰だッ」
と、賊の片足をつかんだ。
いきなり、青い針金のような光が、賊の手元から走ったと思うと、ばすッと、生れてから聞いたことのない異様な音が、お喜乃の耳を衝った。