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Japanische Klassiker mit Furigana

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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

Lesen Sie 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.609 Zeichen · 362 Bildschirme

Aozora Bunko

「む、これに連れている伜」

「お若いのに――」

と、嘆じて、

「山旅に、眼が御不自由では、御難儀な」

「いや、途方に暮れたとは、この事か」

「お若い方は、余り御勉強が過ぎまするで」

「ならば、癒りも早かろうが、火災の折、火に吹かれての……」

外の道を、秋風が、さあっと、木の葉を掃いて行った。美濃の明知から三州境へかかるこの峠も、七刻を過ぎると寂れだった。

すると遠くから子守唄が聞えた。といっても、子守女の哀調ではなく、元気のいい男の声。それに交じって、嬰児の泣き声が、近づいてくる。

「来たそうな」

女房は、土間を抜けて、裏へ駈け出した。乳ぶさをひろげて、待ちながら、

「おうおう泣いて。――飢じゅうなったか」

と、いった。裏口から、入って来た男は、

「やれ、今日は、弱らせられた。――この、泣き虫め」

と、台所の縁へ、菅笠を抛り出した。笠には、一目につくように、

みやこ針みすや。

と、書いてある。

針包の荷を、風呂敷で背なかに廻し、その上に、猿廻しの猿みたいに、まだ母の肌恋しい、満二歳になるかならぬ女の児を背負って歩いている旅の針屋は、

「商売が商売だから、乳を貰うにゃ都合がいいが、きょうは、押井村であてにしていたお内儀さんが留守で、そのまま、餌をやらねえもんだから……」