Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしゅうこうけつじょう
神州纐纈城
国枝 史郎
Lesen Sie 神州纐纈城 (しんしゅうこうけつじょう) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 188.242 Zeichen · 380 Bildschirme
彼は曠野を彷徨って行った。
「俺は教団へは帰るまい」
悲しそうに呟いた。「俺はもっと苦行しよう。当分決して人を説くまい」
白衣姿の優婆塞は、さも遅々として歩いて行った。丘を上り、谷を下り、林の中へ分け入った。
この夜、纐纈城内では、仮面の城主、悪病の持ち主が、いつもの部屋でいつものように、一人牀几に腰掛けていた。
部屋では香炉が燃えていた。露台の扉も開いていた。これはいつもと変りはない。その開いている扉の隙から月の光りが射し込んでいた。
「誰か俺を呼んでいるようだ」
ふと彼は呟いた。
しかし誰も呼んではいない。人声などは聞こえない。
「確かに俺を呼んでいる」
そうだ誰も呼んではいない。が、それにもかかわらず彼には何か聞こえるらしい。
「誰だ!」
と彼は怒鳴るように云った。もちろんどこからも返辞がない。
「そうだ、今夜には限らない。これまで時々湖水の岸から俺を呼ぶような声がする。それを聞くと不思議なことには、俺の心が滅入って来る。何故だろう? 解らない! それにここと湖水とはかなり距離が離れている。声の聞こえる筈がない。錯覚かな? それに相違ない。……ああ今夜も気が滅入る。