Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしゅうこうけつじょう
神州纐纈城
国枝 史郎
Lesen Sie 神州纐纈城 (しんしゅうこうけつじょう) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 188.242 Zeichen · 380 Bildschirme
三
三
「ほんとの恐怖の逃亡が、はじめられたのはそれからだ。東北の方へ遁がれることにした。相変らずの色奉公、妻は妾、俺は男妾、乱倫無慙の生活が、次から次と行われた。越後へ行っては上杉家へ仕え、会津へ行っては蘆名家へ仕え、奥州へ行っては伊達家へ仕え、盛岡へ行っては南部家へ仕え、常陸へ行っては佐竹家へ仕え、結城へ行っては結城家へ仕え、安房へ行っては里見家へ仕えた。いつも不安でならなかった。北条内記の恐ろしい顔が、絶えず眼の先へチラツイていた。いっそ宣り出て討たれようか、その方がどんなに気安いかしれない。醜い浮世、窒息的生活、死んだ方がいい死んだ方がいい! 幾度こんなように思ったろう。しかし俺は考えた。逃げろ逃げろ逃げ切ってしまえ! それが勝利というものだ。弱いなりに徹底しろ、それが勝利というものだ。そうして俺は考えたものだ。俺はこの世に未練はない。死のうと思えばいつでも死ねる。そうして園女もそうらしい。一緒に死んでくれるだろう。二人にとっては死は楽だ。決して決して苦痛ではない。だから死ぬのは止めようではないか。活きていて苦痛を味わおうではないか。そうして恐ろしい恋敵を、あくまで焦心してやろうではないか。