Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしゅうこうけつじょう
神州纐纈城
国枝 史郎
Lesen Sie 神州纐纈城 (しんしゅうこうけつじょう) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 188.242 Zeichen · 380 Bildschirme
四
「さよう……」
と信玄は審しそうに、
「それが何んとか致したかな?」
「宇治拾遺物語の百六十七節に『慈覚大師纐纈城に入り給ふ事』こういう項目がございます」
「纐纈城の物語? おお、あれなら覚えておるよ」
「恐ろしい物語でございましたな?」
「さよう無残な物語であったな」
「山間に鉄の城がある。無数の人間が捕えられている。彼らは天井へ釣るされて締木で生血を絞られる。その血で布が染められる。……その城の名は纐纈城。その布の名は纐纈である。殿! こうでございましたな? ところでここにあるこの紅巾、これこそ纐纈にござります!」
快川長老はこう云いながら、膝の上の紅巾を手に取り上げた、そうして高く頭上へ捧げた。
と、部屋内の灯が、一時に光を失ったかのように、四辺朦朧と小暗くなり、捧げられた深紅の纐纈ばかりが虹のように燦然と輝いた。
ここで物語は一変する。富士の裾野へ移らなければならない。
四
古来富士山の美については多くの墨客騒人が競って絵に描き詩歌に作ったが、しかし誰一人その富士山の物騒な方面を説いたものはない。
戦国時代の富士ときてはかなり物騒なものであった。至る所に猛獣毒蛇魑魅魍魎が横行跋扈し、野武士邪教徒剽盗の類が巣を構えて住んでいた。