Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしゅうこうけつじょう
神州纐纈城
国枝 史郎
Lesen Sie 神州纐纈城 (しんしゅうこうけつじょう) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 188.242 Zeichen · 380 Bildschirme
二
断るも卑怯と思ったので庄三郎は座についた。二人しばらく無言である。
附近で虫が鳴いている。パチパチパチパチパチパチと、岩燕が群をなして颯と頭上を翔け過ぎた。それさえ所がら物寂しい。
また陶器師は眼を閉じた。じっと思案に更けっている。
庄三郎はその様子を真正面から見やったが、
「はてな」と思わざるを得なかった。悪逆無慈悲の殺人鬼、その陶器師の面上に何んとも云えない寂しいもの――愛する主人を失った喪家の犬のような寂しいものが一抹漂っているからであった。良心の苦痛に耐えられず魂の帰趨をなくした人が、往々現わす悲惨な悩み、その悩みから絞り出された世にも陰惨たる寂寥の影……もっと平易に説明すれば悪人懺悔の心持ちが顔に現われているからであった。
二
庄三郎の心持ちはそれを見ると和んで来た。親しみをさえ感じて来た。「悪人と云っても鬼畜ではない。良心を消磨し尽くすことは容易のことでは出来ないと見える。……それに善と云い悪と云っても要するに絶対のものではない。所詮は心の波動に過ぎない。人を殺し物を取る。この行為は世を毒する。すなわち一つの悪行ではあるが、悪行の次に来るものは神のように尊い懺悔心だ。