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Japanische Klassiker mit Furigana

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しんしゅうこうけつじょう

神州纐纈城

国枝 史郎

Lesen Sie 神州纐纈城 (しんしゅうこうけつじょう) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 188.242 Zeichen · 380 Bildschirme

Aozora Bunko

六

その眼は狂人のように血走っている。

「弾くのでございますね、あの歌を。……」

云いながら絃に指を触れた。ジーン、と、云う寂しい音がする。

「後夜の鐘の鳴る頃だ。いつもあの男の来る頃だ。……さあ弾くがいい。弾き次ぐがいい」

「ここは地獄だ! 神様はいない。呼んでも叫んでも助かりっこはない」

女は口の中で呟いた。寂しい音を次々に立て、箏の曲を弾き澄ます。

「……おお、それは序の曲だな」仮面の城主は冷やかに、「この序の曲を弾く頃には、いつもあの男は部屋の外の、花園の辺りに来ている筈だ。で、今夜も来ているだろう。……」

箏の調べは一変した。嘆くがような音を立てる。

「……この調べを弾く頃には、いつもあの男は隣りの部屋の、窓の下に立っている筈だ。だから今夜もあの男は、窓の下に立っていよう」

六

調べはさらに一変し、欷歔のような音となった。

「……水泡よ、お前には男の姿が、今まざまざと見えるだろうな。草色の水干に引っ立て烏帽子、細身の太刀を佩き反らせ、胸の辺に罌粟の花を、いつも一輪付けている筈だ。そうして、その花は男の胸から女の髪へ差し換えられる筈だ。そうしてその花は暁天には、二人の交わせた枕の間へ、物憂く凋んで落ちている筈だ」