Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしゅうこうけつじょう
神州纐纈城
国枝 史郎
Lesen Sie 神州纐纈城 (しんしゅうこうけつじょう) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 188.242 Zeichen · 380 Bildschirme
第八回
一
美しい容貌、上品な姿、大分窶れてはいたけれど、尚高朗たる面影があって、上流の家庭に生長ったところの、若殿であったことが想像された。
恋の悶えに耐えかねて、死場所を見付けに来たのであった。
恋の相手は嫂であった。
一見不倫の恋のようではあったが、事実はあながちそうではなかった。
若侍とその乙女とは、幼少時から恋仲であって、末は夫婦と当人達も思い、世間の人達もそう思っていた。しかるに若侍の実兄なる者が、理不尽にもそれを横取りした。――ここに悲劇の第一歩がある。
乙女は温良な質だったので、すぐ運命に服従した。若侍の方も穏和な質で、且つ宗教的であり文学的であり、戦国の武士にあるまじいほどの、よい精神の持ち主だったので、これも運命に服従した。
で、乙女は良人のために貞節な妻としての本分を尽くし、また若侍は兄に対し忠実な弟としての義務を尽くし、無事に月日を送ろうとした。しかし、これは不自然を極わめた単なる一つの「空想」に過ぎない。
この畸形な三角関係が平和に続けられる筈がない。
恋すまいと思えば思うほどそれが二倍の力となって、若侍は嫂を恋した。嫂の方も同じである。