Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしゅうこうけつじょう
神州纐纈城
国枝 史郎
Lesen Sie 神州纐纈城 (しんしゅうこうけつじょう) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 188.242 Zeichen · 380 Bildschirme
死の胎内を一道の大河が生きて駸々と流れているのだ。しかもその水の行衛と云えば、知っているものはないのであった。流れ流れて消えるのかも知れない。大地の底へ落ち込むのかも知れない。
船はしばらく速く流れた。
その中水勢が和んだと見え、次第に船は速力を弛め、間もなく穏かに流れるようになった。
その頃から四辺が明るくなった。
最初遥かの行手にあたり、蛍火のような微光が見え、船が進むに従って、その微光が色濃くなった。月夜よりはやや暗く、暁の色よりは艶がなく、蒼褪めた他界的の光であったが、他ならぬ夜光虫の光であった。幾億万とも数えられない発光体の微細動物は、両岸の岩にも水の中にも、高い高い天井にも、べったり喰い付いているのであった。岩そのものが発光体であり、水そのものが発光体かのように、朦朧と光って見えるのは、当然のことと云わなければならない。
と、船は光の中へはいった。
蒼褪めた顔、落ち窪んだ眼、血にまみれた腕や足、船底に仰臥した庄三郎の姿は、呼吸のある人間とは見えなかった。このまま彼は死ぬのかも知れない。父母とも叔父とも逢うことが出来ず、闇から闇へ葬られるのかもしれない。