Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしゅうこうけつじょう
神州纐纈城
国枝 史郎
Lesen Sie 神州纐纈城 (しんしゅうこうけつじょう) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 188.242 Zeichen · 380 Bildschirme
一人の武士が鍛冶小路を、お館の方へ走って行った。
と、曽根屋敷の土塀の蔭から、一人の武士が走り出た。
「待て!」
「何を!」
「待て!」
「黙れ!」
突然刀が抜き合わされた。
間もなく「あっ」という声がした。一人の武士が切り斃され、一人の武士が見下ろしている。
「桝形東馬だ。俺の親友だ。……何んのために俺は殺したんだ。……何んだか知らない。恐ろしかったからだ。……俺は生きてはいられない。……腹を切ろう腹を切ろう」
大地へ坐って腹を切った。
赤の恐怖の所業であった。
一軒の家では掴み合っていた。一軒の家では泣き喚いていた。
何かが、そうだ、恐ろしい何かが、潜入したに相違ない。
だがやがて夜があけた。
憐れな行列が通って行った。
花嫁姿の若い女が、顔へ四角の白布を下げ、よろめきながら先に立っていた。つづいて若い男が行った。花婿姿は派手やかであったが、やはり白布で顔を隠していた。後に続いて数十人の人が、一様に顔を白布で隠し、あるいは這い、あるいはいざり、またはノロノロと歩いて行った。
指のもげた者、片足欠けた者、腕の取れた者、耳の腐った者――一夜で出来た癩人であった。