Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしゅうこうけつじょう
神州纐纈城
国枝 史郎
Lesen Sie 神州纐纈城 (しんしゅうこうけつじょう) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 188.242 Zeichen · 380 Bildschirme
権式張るならおいてくれ。なるほど昔の俺らなら、位置の高下もあったろう。俺はわずかに蔵奉行、お前は素晴しい大身だ。しかし今じゃあ同じよ。富士の裾野に巣食っている、魑魅魍魎の仲間だあね。なんの差別があるものか。うん、これだけでもいい気持ちだ。そうともそうとも俺にはな。なんの昔が恋しいものか。……おおおおどうするえ陶器師、出すか厭か、聞きたくねえか」
嵩にかかって云い募った。
恐ろしく薪兵衛は愉快そうであった。
同じ家中にいた頃は、身分の相違で圧迫され、同じ剽盗になってからも、技倆の違いで威圧された、その鬱憤を晴らすのが、何んとも云えず楽しいらしい。云い募り云い募りしながらも、絶えず彼はヘラヘラ笑った。
だが陶器師は動じなかった。右手を敷いて枕とし、左手を自然に脇腹へ置き、眼を瞑じ唇を閉じていた。しかし顔色は蒼かった。益々蒼くなって行った。そうして左手の爪先が、幽かに幽かに痙攣した。
「薪兵衛」と陶器師は不意に云った。それは落ち着いた声であった。氷のように冷たかった。だが一脈凄気があった。
「お前のためだ、喋舌るのは止めろ」
「何を?」と薪兵衛は憎さ気に云った。